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「遺言」大切な人達のために

父が亡くなり、いろいろな手続きがあった。
人一人いたことを「無」にするための作業は大変で面倒臭く、寂しい作業だった。
父が救命救急病棟に入った時も、私たち家族はみな時間はかかるかもしれないが、退院できると思っていた。
以前と同じような生活は無理であっても、退院できると思っていた。
入院期間はあっという間に過ぎて行ったが、その最中はとても長く感じた。
なのにまさかこんなに早くお別れのときが来るとは思っていなかった。
生前入院する前に、どこそこの家では遺産でもめてるみたいだな、とか父と世間話として話したことがあった。
父だっていつかいなくなるのに、父がいなくなるなんてそんなことちっとも考えていなかった。
父だって考えていなかったと思う。
だからもちろん財産に関する遺言なんてなかった。
たくさんの手続きが済んで忌明けの法要が終わるころ、父の遺産について兄弟で話し合うことになった。
父ははごく普通のサラリーマンで、地主でも資産家でもないが自宅の建つ土地があった。
定年を迎えていた父は、贅沢はできないが生活に困る事はない程度の収入があった位で、それ以外は負の遺産も財産と呼べるようなものもなかった。
私たち兄弟は子どものときは喧嘩もいっぱいしたし、仲良し兄弟というわけではなかったが、結婚し子どもができてからは、母がいない分協力しあっていた。
それでもいざ遺産の話となると、お金が絡むことだけになんとなくお互い遠慮というか、微妙な雰囲気だった。
父名義の自宅土地は、数年前に二世帯住宅に新築して、私たち家族が同居していた。
新築する話が出たときに父、弟と土地についても話をした。
その時もなんとなく口頭で話をしただけで、きちんとした手続きをすることはなかった。
一緒に住むからには父になにかあった時には私が対応するし、そのまま相続することになるのかな、という程度だった。
きっちりここで生前贈与にするより、遺産相続にする方が税率が有利であるということもあったが、それよりもまだまだ父は元気であるのに土地の話を具体的にすることに抵抗があった。
しかし今思えばきちんと話をするべきだったし、法的な書面でないにしてももっと腹を割って話をしたり、覚書程度でも三人で交わしておいてもよかったな、と思う。
たいして広いわけではないが、この地域で同じ位の広さの土地を購入しようとすると2000万円以上するらしい。
弟にも私と同じように土地を相続する権利がある。
私たち家族がこの土地に住んでいなければ、土地を売って半分ずつに分ければよい。
しかし私たち家族が住んでおり、弟は土地は放棄する、といってくれた。
とてもありがたかった。
世の中には住んでいる土地であっても相続で揉めて、結局出ていかなければいけないような事だってあるらしい。
土地は放棄する代わりに現金なり同等のものを渡してくれ、ってこともあると聞いた。
1000万円なんて大金簡単に用意できるわけがないし、そんな大金を貯金できている人だって一握りなんじゃないかと思う。
土地があって、現金がない人の方が相続のときには揉める場合があるとも聞いた。
父が残した貯金では弟の本来の権利からするとまったく足りない。
しかし弟はそれでいいといってくれた。
本当にありがたいと思った。
遺言があっても法定相続とかいろいろ細かく、素人には難しい制度や手続きがある。
幸いうちでは弟と揉めることがなかったが、それでもやっぱりいつ何時何があるかわからないからこそ、遺言があった方がいいんじゃないかと思う。
残された人たちが気まずい思いや、悲しい思いをすることが減るんじゃないかと思う。

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